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楽曲分析と演奏解釈 〜「悲愴」「風紋」を例として〜 (保科 洋 著)
3)フレーズ・グループ ⇒ 抑揚の生成 ⇒ 重心(抑揚の頂点)
以上が楽譜という手紙を演奏者に読み取ってもらうための基本的共通語(音の物理的特性と音符の関連)です。ただし、作曲者は己の意図を演奏者に的確に伝えるために、音符という単独では意味を成さない文字を単語やセンテンスとして構造化・文章化しています。
a)グループ
文章において個々の文字(アイウエオ、ABC、など)が単独では意味を持てずに(例外はあります)複数の文字を組み合わせることで単語として活用しているのと同様に、音符も単独では音楽的意味を表現することは出来ません。音楽的意味を持たせるためには、複数個が集まって更にそれらのエネルギー状態を連続させる必要があるのです。このエネルギー的に連続している最小の音群を「グループ」ということにします。言い換えれば、エネルギーが連続しなくなるとそこでグループは終わったと感じるのです。つまり、エネルギーの谷間はグループの接点として感じ取られるのです。
譜例3の上段はすべて8分音符ですからそのエネルギーは均一です。言い換えればこれらは連続していると感じ取れます。つまり、どこかでエネルギー状態を切断しようと思っても(単語に分けようとしても)どこが適切であるかを決めることは出来ません(拍子に潜在する拍節感はこの際考えないことにします)。
しかし下段のように変化させると、音価の変動に応じてエネルギー状態に差が生じることになります。したがって、これらのエネルギーを繋げるためには、音価が長い音符(エネルギー大)に先行する音符はその落差を埋めるためにクレッシェンドが必要になり、後続する音符には同じ理由でディミニュエンドが必要になります。すなわちエネルギーの大きい音符を軸として下段に示したような音量の抑揚が生じるのです! 見方を変えれば、抑揚の谷間を接点として音符はグループ化されることになります。このように、グループとはエネルギーが大きい箇所を軸として生じた抑揚の単位なのです(譜例3のカッコで括られた音群)。そしてグループの軸になるエネルギーの最も大きい音(箇所)を「重心」(譜例3↓の音)といいます。
グループとは重心を軸としたエネルギーの抑揚を内包する最小の音群!
このグループこそが音楽における単語であり表現のための基本的単位なのです。なお、下段下部に記したリズムはこのグループの最も妥当と思われる「骨のリズム」を表しています。
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楽曲分析と演奏解釈 〜「悲愴」「風紋」を例として〜 (保科 洋 著)
