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楽曲分析と演奏解釈 〜「悲愴」「風紋」を例として〜 (保科 洋 著)
楽曲分析の道具
それでは本日演奏する「悲愴」交響曲と「風紋」を材料にして台所の情景をお見せしたいと思いますが、それに先立って、分析の根拠となる要点をまとめておきましょう。やや理屈っぽいかと思いますが、これからの解説を理解していただくためには不可欠の事項ですのでご勘弁下さい。
説明文で使っているさまざまな用語については必要最小限の注釈にせざるを得ませんでしたので、分かりにくい箇所もあるかと懸念しております。なおこれらの内容は、拙著「生きた音楽表現へのアプローチ」(音楽の友社)の記述をもとに書いたものですが、残念ながら同書は現在絶版中です(インターネット上で時々売買されているようですが、非常に高価なプレミアムがついているようで困っております。皆さんのご協力で再販されることを祈っております)。
1)音符の長さ(音価)は音の強さ(大きさ)
音楽の素材はいうまでもなく音です。音は空気が振動することによって生じます。そして空気を振動させるには何らかのエネルギーが必要で、エネルギーが大きくなるほど音は強く(大きく)そして高くなります。
つまり音を生み出すエネルギーの大きさと音の強さ(振幅)・高さ(振動数)は連動しているのです。
作曲家は伝えたい音楽を楽譜という手紙に書きますが、楽譜の主役は音符ですから、音符は上記のような音の特性を伝える機能を持っていると考えられます(仮に音符が音の特性を記せなかったら、楽譜は手紙の用をなさないことになってしまうでしょう)。
ところで、個々の音符は長さ(音価といいます)と高さしか記すことは出来ません。そこで、
音符の長さ(音価)とは音の強さ(大きさ)を表したもの、
と考えてみましょう。そのように仮定すれば、音符とはその高さと長さを支えるために必要なエネルギーの状態を表したものとなり、音符が連なって出来ている旋律などはエネルギーが推移して行くさまを表わした一種のグラフと見ることが出来ます。すなわち、
音符の高さ・長さが推移する変化は、音というエネルギーの変動・抑揚を暗示しているのです。
以上の物理的な音の特性と音符の機能の関連を整理しますと下図のようになります。
上図を解説しましょう。音は物理的には振幅、振動数、波形の三要素で特徴づけられます。音の振動数が変化すると音高の変化として現れますのでこれは五線紙上に音符で記すことが出来ます(ただしデジタル)。また振動数が異なる複数の音が同時に響くと和音になりますが、和音も含めて同時に複数の音が響く状態(音積ということにします)は複数の音符を使って記すことが出来ます。さらに音の波形の違いは音色の違いとして現れますが、残念ながら音色は音符で記すことが出来ません。そして最後に振幅ですが、
振幅の変化は音量の変動として現れますが、音符ではこれを音長を変えることで記しているのです(注)
(注)これは振動のエネルギーを表す公式に基づいた私の仮説です。詳細は省きますが一例をあげますと、ギターは強く弾くほど余韻が長くなります。つまり弾くエネルギーの大きさとその結果生じる余韻の長さは因果関係にあります。そこで音符とはこの場合の結果を記していると仮定するのです。以下の解説はこの仮説をもとに述べていますので今はこの仮定を了承してください。疑念を持たれる方もおられると思いますが追って説明するつもりです。
このことは、音価が長い音は音量が大きいことを意味します(重大な例外が一つありますが後述します)。より一般的に言えば、長さが異なる音符の組み合わせは必ず音量の変動を伴う のです。
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楽曲分析と演奏解釈 〜「悲愴」「風紋」を例として〜 (保科 洋 著)
